空き校舎で仕事と人を呼び込め 小さな村の挑戦

 

空き校舎をどうするのか。この連載で何度もお伝えしている理由は、高岡市で10もの空き校舎が出るからです。人口減少に伴って、避けられない状況なのです。

全国の自治体はどう対応しているのか。そこに高岡市の空き校舎活用のヒントがあるかもしれない。私は、全国を取材しています。今回は、福島県玉川村です。

「2020年3月に廃校になりましたが、まだまだ使える校舎です。放置しているのはもったいない」。そう語るのは、企画政策課課長補佐の添田孝則さんです。

旧須釜中学校が閉校となって、すぐに議論したのは、どのように活用するかです。ちょうど新型コロナが始まったばかりのころです。住民の中では「自宅で仕事をしているが、子どもの声がうるさくて仕事にならない」「おじいちゃん、おばあちゃんのラジオの音で、集中できない」などの声が寄せられました。こうした声を踏まえて、7月から、1階の職員室について、コワーキングスペースとして実験的に利用することにしました。Wi-Fiの設置費用など掛かった経費は300万円です。

当初は、「あまり使う人はいないのではないか」という声もありましたが、そんな不安はすぐになくなりました。利用者は予想を大幅に超えたのです。そこで、玉川村は、この校舎の本格利用の検討を始めました。

住民を交えて6回ワークショップを開催。卒業生も含めたさまざまな意見を聞きました。「学校というのは。地域住民の思い入れが強い建物です。住民の気持ちに寄り添うのが大事です。自分の土地を提供したいという人もいました」(添田さん)。

3月末に基本構想がまとまりました。それは、職・住・遊・学を提供する場所として「すがまプラザ」の整備構想です。中核となったのは、交流センターです。空き校舎を改修し、2022年春に開業しました。2階はオフィススペースです。また、家庭科室は料理教室、音楽室は音楽会、体育館はスポーツイベントなどを提供する場になっています。

総事業費はおよそ1億円。デジタル田園都市構想整備交付金を使って、国から2分の1の補助を受けました。

このオフィス、当初は2024年度に7社を集める計画でしたが、去年秋にすでに満杯になりました。県外はIT企業やイベント会社など4社。県内は、クラフトビール製造会社など5社合わせて、9社が入っています。添田さんは、「空き校舎に対する住民の思いが強いので、2階のオフィススペース以外は住民が自由に入ることができます」と話しました。

さらに、23年度は校庭の整備に着手します。38区画の宅地を造成するのです。県外からの移住者の受け皿とするのです。

玉川村は人口6000人の小さな村です。福島空港に近いという利点を生かして、空き校舎を再整備しました。空き校舎として放置されていたのは、わずか3カ月。ニーズを探りながら、住民の声を聞き、賑わいの拠点しようとしているのです。私は取材しながら、高岡市でも、玉川村のやり方は十分に応用できると、思いました。

 

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