「え、2段階も引き下げ」・・・被災者の思いに高岡市は
「最も深く水がついたのに、なぜ、準半壊なんですか。それまで中規模半壊だったのに、一気に2段階も引き下げられたのです」。
先月の富山県高岡市を襲った大雨の際に、床上浸水したAさんが私にこう伝えました。この地区は、15軒ほどありますが、Aさん宅が最も浸水したといいます。
地形的に低くなっており、水が溜まりやすいのです。自らも被災した、他の住民も同情しています。
「我々が半壊という認定なのに、なぜAさんが準半壊なんでしょうか。最も浸水被害を受けたのですよ」。
被災した場合、真っ先に、必要なのは、罹災証明書です。被災者が申請し、行政が現場で審査します。
その家の被害の程度は、全壊、大規模半壊、中規模半壊、半壊、準半壊、一部損壊の6段階で判定します。
Aさん宅は、一次審査では中規模半壊だったのに、二次審査で準半壊に引き下げられたのです。
罹災証明書は、被災者が各種支援の適用を受ける際の判断材料として使われることも多く、2段階の引き下げは支援に大きな影響が出ます。
なぜ引き下げになったのか。私は担当課に聞きました。
「基準に照らした上で、引き下げました」。
「その基準とは何ですか」。
「お見せできません。今後深刻さがわかれば、また変更することもあります。所有者の方が壁をはがすなどしてくれれば、壁の中をチェックできます」。
「壁をはがさなくても、半壊認定しているところもあるではないですか」。
結局、議論は平行線となりました。私は、不思議に思いました。資産税課の職員が審査していると言いますが、壁の中の水分の含有量などはわかりません。目視で判断しているだけです。
私は先日、長岡技術科学大学の木村准教授を高岡にお招きしました。木村さんは全国各地の被災現場に出向いている災害復旧活動のプロです。
その上で、Aさん宅で壁の中の水分がどれだけ含まれているかなどを、機械でチェックしてもらいました。床上浸水し、かなりの高さまで、水分が含まれていることがわかりました。
水害は水が引けば、一見、何事もなかったように見えるものの、壁や床には大量の水分が吸収しています。その場合、張り替えが必要です。
木村さんは「地震などはまだ目に見えますが、水害は目に見えない分厄介なのです。したがって床上浸水すれば、事実上、そのまま半壊と認定している自治体もあります」と説明しています。
私は内閣府にも掛け合いました。「罹災証明書は、国が指示できるものではありません。市町村の独自判断です。ただ、とても重要です。自治体の中では、資産税課の職員だけでなく、建築関係の職員も同行してもらっているところもあります」と指摘していました。罹災認定はもめるケースもあり、慎重に認定しているのです。
また、被災地では固定資産税の減免措置も話題となりました。固定資産税のうち、その災害を受けた日以後に納期限が到来する税額については軽減または免除されますが、
被災者の方は、「一括で支払ったので、減免措置がないと言われた」とこぼします。
「災害を受けた日以後に納期限」という点からすれば、そうかもしれませんが、
一括納付した人が不利になるのは解せません。私が強く主張しました。他の自治体では、一括前納した人にも、
減免措置があります。
これに対しては高岡市側も理解を示してくれました。
恐らく、高岡市も、救済措置に動いてくれる可能性があります。
今回の大雨で、富山県は高岡市に災害救助法を適用しました。「災害救助法」が適用されると、応急修理制度を使えます。
この制度は、住宅の応急修理のほか衣服や寝具など生活必需品の支給、障害物の除去などの対応にかかる費用を自治体の代わりに国と県が負担することになります。
ただ、注意しなければならないポイントがあります。
被災者が先に代金を支払ってしまうと適用外になります。この地区でも、既に畳を敷くのに、お金を払った人がいますが、こうした方は、後でお金が出ません。
木村さんによれば、応急修理制度は、所得の低くて、自らのお金で修理できない世帯について行政が代わりに応急的に修理を行い、避難所から帰宅してもらう仕組みです。
当初、かなり細かい手続きが必要だったのですが、熊本地震をきっかけに、運用が改善されました。
ただ、もともとの制度発足の意味合いもあり、業者にお金を払ってしまうと、「お金がある」とみなされるのです。
また、雑損控除と言う控除もあります。自然災害や火災、盗難、横領などによって損失があった人が受けられる控除です。
被災されたサラリーマンの方も確定申告すれば、お金が還付される仕組みです。
被災者に寄り添ってどのようにして情報を伝えるのか。私自身、もっと勉強しなければならないと痛感しました。