震災で学んだリーダー像

能登半島地震に直面しながら、私は13年前を思い起こしています。2011年3月11日です。東日本大震災が起きました。そして原発事故。震災前から忍び寄る財政赤字や少子高齢化。未曾有の危機の時代、ここからどのように復興するのか。ジャーナリスト、いや一職業人として、それが最大のテーマになりました。

当時私はテレビ朝日「報道ステーション」の番組の責任者。現場に行きたいという思いはありましたが、陣頭指揮を執る立場です。東京から離れることができません。現場にいる部下の記者やディレクターからの報告を受けながら、日本の危機を実感していました。危機の時代のリーダー像を探していたのです。

当時は民主党政権。2009年夏の総選挙で圧勝し、政権を獲得しましたが、その熱気はすっかり冷めていました。政権与党の幹部が「言うだけ番長」というあだ名もついていました。予算を見れば、財源もないまま大盤振舞でした。さらに震災後も復興、復旧そっちのけで、政争を続ける永田町の面々。私は嫌気をさしていました。

震災以降、週末遊びに行ったりする、気分転換する気になれず、ただひたすら復興に役立つことをしたいと思いました。危機の時代に頼れるリーダーは誰か。その結果、たどり着いたのが、「メザシの土光さん」、つまり土光敏夫です。

土光は石川島播磨、東芝の社長、会長を歴任。その後は経団連会長、第二臨調会長として活躍しました。つまり、戦後復興に全力を尽くし、高度経済成長を駆け抜け、晩年は命がけで日本の財政再建に辣腕をふるったのです。