NHKプロジェクトXに「師匠」
きょうのNHKのプロジェクトXは、
隠岐にある島根県海士町を描いていました。
見ごたえありましたね。
町長だった山内道雄さん、私が改めて最も尊敬する首長です。
テレビを見ながら、大興奮。
山内さんに久しぶりに携帯電話しようと思いましたが、
NHKの番組によると、山内は今年1月に亡くなっていました。
知らなかったことを大いに反省しております。
なんだか涙が止まらなくなりました,
山内さん、ご冥福をお祈りします。
さて、海士町は人口2000人余り。隠岐諸島にある小さな町です。
山内さんは4期16年町長を務め、平成30年に退任しましたが、海士町は山内さんのリーダーシップの下、見事に再生しました。
私は退任直前に山内さんに話を聞きました。
町長に就任した2年目のころから、話が始まりました。
当時の最大の政治課題は、100億円以上の借金でした。
「財政破たん寸前でした。住民サービスが今後低下することが予想されました。住民の理解を得るには、私自身が本気になって改革する姿勢を見せなければなりません。給料を30%カットしたのです。そして、町長が乗る公用車もやめました。」
一方、同時に「攻め」の姿勢も鮮明にしました。役場は「総合サービス商社」と称した。最大の眼目は「外貨」を稼ぐことです。産業をつくり、人口を増やすための施策を強化した。
「本気の人間には本気で支援する」。それが山内さんのモットーです。東京から移住してきた若者が干しナマコを産業化したいと言い出した際、山内さんは支援した。つまり、干しナマコの加工場の建設費7000万円を議案として議会に提出した。「議会では、さんざん反対されました。たった一人のために造るのはおかしいというのです」。
山内さんはこう反論した。その若者が本気で海士町に定住して、干しナマコを売れば、ナマコを出荷する地元の漁師たちの懐も潤う。つまり、島の漁業を支援するための資金だと強調した。その若者は、干しナマコは中国で高級食材として高額な値段で取引されているのを熟知していたという。
このほかにも、岩がきや白イカを、細胞組織を壊さず冷凍させる施設を5億円かけて建設した。限りなく生に近い食感を保てるのが特徴だ。本州まで運ぶ間に魚の鮮度が落ちて、安い値段で取引されていた状況が一変した。また、都会の大企業に勤めていた若者が相次いでIターンした。「島留学」を打ち出し、全国の高校生も生活するようになった。
就任以来16年。山内は「外」からお金と人材の獲得に成功した。人口も下げ止り、借金も減った。人口問題の専門家によれば、海士町は2060年には人口が倍になるという。「トップの仕事とは覚悟、決断、実行です。職員がチャレンジする環境をつくるのが首長の仕事です。それができなければ、町は沈む」。
その時、80歳になるとは思えない熱量のある言葉を繰り出す。それを聞きながら、私は確信した。リーダーの率先垂範こそが危機を克服する。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」。これは、連合艦隊司令長官、山本五十六の言葉である。絶対服従の軍隊ですら、リーダーが率先しなければ、組織は動かない。それは、地域再生にも当てはまる。