「惻隠の情」と武士道精神
上京の際、旧知の経済人に会いました。
私が経団連担当記者だったころ、親しくさせていただいた方です。
当時の経団連は、トヨタ自動車の奥田会長が会長でした。
奥田氏と言えば、大企業病に陥っていた、
トヨタ自動車を改革した経営者です。
ハイブリッドカーの「プリウス」をトップダウンの判断で発売しました。
経団連会長としても辣腕を発揮していました。
小泉総理の時代、構造改革を推進する一方で、政府に歯に衣着せぬ発言をしていました。
また、月刊誌に「経営者よ、クビ切りするなら切腹せよ」という論文を投稿。
話題になりました。
担当記者として、刺激的な毎日を送らせていただきました。
その奥田氏は現在、90歳。表舞台から遠ざかっていますが、
最後に表舞台に出たのは、2017年6月の「月刊経団連」です。
東京で会った冒頭の経済人が私に、その雑誌をくれました。
奥田さんはそこに印象的な言葉を残しています。
「弱者のことを全く考えないような日本社会の風潮に危機感を覚える」
「ネット社会いに暮らす日本人一人ひとりがこういう時代だからこそ、惻隠の情をもって他人と接しなければならない」
このままでは殺伐として社会になるとして、
「武士道精神を忘れるな」という強烈なメッセージを残しているのです。
「惻隠の情」こそが日本人の美徳。立ち返って、社会全体で難題を克服していこうというのです。
私も政治家として、最も大事なのは「惻隠の情」だと思っています。
スポットライトを浴びない人は確実にいるのです。
物価高で悲鳴を上げている年金暮らしの高齢者。
何人もの子供のいるシングルマザー。
挑戦したくても挑戦できない人。
さまざまな災難に見舞われている人。
「惻隠の情」の理念をもって、政治が
こうした人たちをどうすれば救えるのか。
そんな政治をしてきます。