空き校舎問題、金沢で学ぶ
9月定例会が終わった後もバタバタしていましたが、少し時間があったので金沢に行ってきました。観光が目的だったのですが、結局は、視察もしてみました。政治家なって1年。仕事を忘れる瞬間はありません。高岡の参考になることは何か。いつもそればかり考えています。高岡に戻ってきてから完全な休みはありません。振り返れば、記者生活を30年やりましたが、その時も、旅行に出でも、本を読んでもネタ探ししていました。あまり変わらないのです。
たまたま金沢で見つけたテーマは2つです。空き校舎とコミュニティバス。この2つのテーマは、この連載でお伝えしたように、私が高岡市議会9月定例会で質問しました。高岡市では空き校舎に関しては利活用する考えはなく「解体か売却」。コミュニティバスについては「検討する予定はない」でした。結論から言えば、金沢は高岡とは全く違っていました。
まずは空き校舎。2014年に廃校になった旧野町小学校が生まれ変わっていました。
ここは、街中にも近く、室生犀星が卒業したことで知られています。この空き校舎を利用して去年オープンしたのが「金沢未来のまち創造館」です。高岡のような「解体や売却」ではなく、「転用」です。
なぜ転用したのか。金沢市役所の産業政策課は、地域住民が残してほしいと訴えていたためだと説明。「小学校の校舎は地域の思い入れが強いものです。地域の意向にできる限り寄り添う必要があります。」と語っています。
4階建ての空き校舎は改修されました。その際、学校で使われていた黒板や棚などをできるだけ多く残しました。地域で愛された校舎の思い出をあえて残したそうです。新しさの中に古さを残したのです。それも地元住民の思いを反映したものです。
一つ棟を増築しました。その棟には、木材を多く使った開放的な吹き抜けがあります。そこには新たにエレベーターを付けました。
コンセプトは「ものづくり、子ども、食」です。新たな産業の育成と、未来で活躍する人材育成のための施設です。託児所もあれば、オフィスや研究所、調理室もあります。
託児所は1回500円で、生後6カ月から就学前までの乳幼児が対象となっています。4時間まで使えます。オフィスや研究所は全て埋まっています。調理室では料理教室などが開かれたりしています。
このほか、子どもたちが3Dプリンターを使って自由につくったりできる場所や、起業家らが集えるコワーキングスペースなどもあります。
さらに、注目されるのは、4階の「食の価値創造」スペースです。こちらでは、医療用の遠心分離機を備えています。それを使った料理方法の研究ができるのです。従来の調理のイメージを一新します。
それではこの空き校舎の転用、いったいいくらかかったのでしょうか。総事業費は9億1000万円です。このうち50%は国からの交付金です。社会資本整備総合交付金と呼ばれるものです。残りの4億5500万円のうち、一般財源は1割。つまり、4500万円です。残りの4億1000万円は、借金することになりますが、そのうちの一部は、国から戻ってきます。ちゃんと、市の負担が大きくならないように配慮しています。
金沢市は、空き校舎に関して、まずは地元の人の思いを考慮しました。そして、金沢の未来にとって何が必要かを考え、「金沢未来のまち創造館」が誕生したのです。そのために、いい条件の財源を探したのです。
高岡の空き校舎問題は、まず「財源ありき」で議論がスタートしました。新校舎の建設には巨額の費用がかかるので、「有利な地方債」、いい条件の借金をしなければならない。このためには、5年以内の解体か売却、という流れになっています。地元住民の思いを残すという議論はありません。私はそれに違和感を抱きます。金沢視察は大いに役立ちました。次はコミュニティバスについてお伝えします。